【わかりやすい法律】

 

法律の理解は難しいが、法律的な思考がわかると意外と間単に理解できます。
それは数学的な考え方に似ているかもしれない。

法律を知る上で、その用語単語の意味が分かることが前提となってきます。ここでは法律の重要な民法のうち主なものを説明しています。

物権とは

物権とは、物を支配する権利であり、所有権がその典型。 所有権は者の全面的支配権で、所有権者は使用収益したり処分したりすることができる。 これに対する物権で、者の使用収益だけができる物権は用益物権。物を処分することで得られる、交換価値を握る物件を担保物権という。 他には占有権がある。
 

1.物権変動

@対抗要件
物権変動は、原則当事者の意志表示により発生。所有権は合意時に移転する。 所有権の移転と登記は関係が無い。 また、登記または引渡しが無ければ当事者以外の第三者に対抗することができない。 登記は不動産物権変動の対抗要件。引渡しは動産物権変動の対抗要件である。 登記の効力について、公信力はありません。 公信力とは、登記の内容を信じた者に対して、その内容を認めることである。 日本においては登記に公信力は認められていない。

A2重売買
2重売買とは、同一の不動産所有者が複数の相手に物権変動の意志表示をすることである。 一物一権主義からも所有権を一つに決めなければならない。それを決定するのが登記である。 先に登記を備えたほうが所有権を取得する。

B物権化(賃借権)
たとえば、土地を借りていた者がいて、その土地の貸主がその所有権を第三者に移した場合のこと。 不動産賃借権は物権化されていて、登記ができる。賃借人は賃借権を登記していれば第三者に対抗できる。

C登記することなく第三者に対抗できるか
原則として、不動産は登記が無ければ第三者に対抗できない。 ここでは、登記がなくても対抗できるものを紹介する。
<背信的悪意者>
2重売買において、2番目の買主が著しく信義に反すると認められる場合、1番目の買主は登記なくして、2番目の買主に対抗できる。
<無権利者>
たとえば、土地を譲り受けた者は、その土地を権限がない者から譲り受けた者に対して、登記なくして対抗できる。
<不法行為者・不法占拠者>
不法行為者・不法占拠者に対しては、その所有権を有するものは、登記なくして対抗できる。
<登記を委任された者>
登記手続きを委任された司法書士などが、自分自身に登記した場合などは、その委任をしたものは登記なくして司法書士に対抗できる。
<詐欺・強迫>
詐欺・強迫などにより、登記申請を妨げられた者は、その登記申請を妨げた者に登記なくして対抗できる。
 

2.所有権

@所有権について
所有権とは、物に対する全面的支配権である。 所有者は自由にその所有権の使用及び収益、処分をすることができる。 土地所有権の利害関係を調整するための規定として、相隣関係が制約されている。 土地の境界付近で建築等をする時には、隣地の使用を請求することができる。 隣人の承諾がないと立ち入ることはできない。 所有権の取得に関して、所有者の無い動産は所有する意志をもって占有した者が取得kする。 所有者のない不動産は国のものになる。 拾得物については、一定の手続き後6ヶ月経過しても所有者が現れない場合は、拾得者が所有権を取得する。

A通行権について
土地所有権の利害関係を調整するための規定として、相隣関係が制約されている。 土地の境界付近で建築等をする時には、隣地の使用を請求することができる。 隣人の承諾がないと立ち入ることはできない。 公道に面していない土地の所有者は公道にいたるための他の土地を通行することができる。 損害を生じさせた時は、償金を支払うことになる。 譲渡などで公道に通じない土地が生じたときは、もともと1つだった土地の他の部分のみを通行することができる。 竹木について、隣地の竹木の枝が境界を越えてきた場合は、その所有者に枝を切るように請求することができる。 だだし、勝手に切ってはならない。 これに対して、隣地の竹木の根が境界を越えてきたときは、勝手に切ることができる。
 

3.用益物権

@地上権
地上権とは、工作物や竹木を所有するために他人の土地を利用する権利。 設定契約によって成立し、土地の一部にも設定可能である。 地上権にも時効制度は適用される。 外見上は土地賃借権と同じである地上権は、その権利内容は大きく違う。 譲渡・転貸時の地主の承諾は要らない。 登記請求権が有り、地主は応じる必要がある。 地代は当事者で決めて、無償も可能である。 期間は定める必要はなく、永久にもできる。

A地役権
地役権とは、契約で定めた目的に従い、他人の土地を自分のために利用する権利である。 利用価値を高めるため利用する特定の土地を要役地、利用される土地を承役地という。 地役権者は契約と決めた範囲で承役地を利用することができ、これを排他的に支配することはできない。 承役地の所有者の利用を妨げることはできないのである。 地役権にも種類があり、承役地を通行することができる通行地役権など。 また、同一の土地を承役地とし、複数の地役権を設定することができる。 地役権を取得するには、設定契約によりできる。 時効制度も適用があり、性質として付従性・不可分性がある。

B永小作権
永小作権とは、工作または牧畜をするため小作料を払い他人の土地を利用する権利である。 譲渡・転貸ができ、登記をすることにより、第三者に対抗できる。20年以上50年以下の範囲で設定しなければならない。

C入会権
入会権とは、一定の地域に住んでいる住民団体が山林・原野・漁場などを支配する権利である。 その地域にある支配秩序を法認して、慣習的な物権としている。
 

4.担保物権

担保物権とは、債権者に債権の回収を確保させることを目的とする物権。 民法において担保物権は留置権、先取特権、質権、抵当権がある。 担保物権には、付従性・随伴性・不可分性・物上代位性がある。 留置権以外の先取特権・質権・抵当権には優先弁済的効力がある。

@留置権
留置権とは、他人の物の占有者が、その物について発生した債権の弁済を受けるまでその物を留置することができる担保物権。 特徴としては、優先弁済的効力が無い。 善管注意義務がある。 対抗要件は登記ではなく占有である。 また、留置権行使は被担保債権の消滅時効の中断事由とはならない。消滅時効は進行している。

A先取特権
先取特権とは、ある特定の債権を有する者が、債務者の財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる担保物権である。 一般の先取特権、動産の先取特権、不動産の先取特権などがある。 特に不動産の先取特権は重要で、不動産保存の先取特権、不動産工事の先取特権、不動産売買の先取特権がある。 不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権は所定の登記をすれば、先に登記された抵当権に優先する。 ちなみに、留置権と先取特権は法律により規定される法廷担保物権。質権と抵当権は当事者の契約によって成立する約定担保物権である。

B質権
質権とは、債権者が債権の担保として債務者から引渡しを受けた物を留置して、弁済が無いときはその目的物から優先して弁済を受けることができる担保物権のこと。 動産質、不動産質などがある。 当事者の契約によって成立する約定担保物権であり、その契約は要物契約である。 また、将来に発生する債権を質権の被担保債権としてもよい。 不動産質権に関して、存続期間は10年を超えることができない、それ以上の期間を定めた場合、10年に短縮される。

C抵当権
■抵当権の意義
抵当権とは、債務者が担保として提供した不動産を、そのまま債務者に占有させたまま引き続き使用収益させておき、もし債務が履行されないときは、その不動産を競売して、その競売代金から他の一般債権者や後順位の担保権者に優先して弁済を受けることのできる担保物権である。

■抵当権の目的
抵当権の目的となるのは、不動産・地上権・永小作権になる。 地上権や永小作権は土地に対する物権であり、登記が可能であるので、抵当権の目的とすることができる。 賃借権は土地の利用権があり、登記も可能だが、抵当権の目的とすることができない。

■抵当権の設定
抵当権の設定は当事者(抵当権者と抵当権設定者)の合意により成立する。書面でする必要はない。 第三者に対抗するためには登記が必要である。 しかし、当事者間では抵当権の効力がある。 また、抵当権は1つの不動産に複数の設定ができる。 この場合、登記のなされた順に、各抵当権の順位が決まる。 抵当権の設定は債務者以外の第三者からでもすることができる。この第三者は物上保証人という。

■抵当権の性質
抵当権には付従性が有り、被担保債権が無ければ成立せず、被担保債権が無くなれば、抵当権も当然に無くなる。 随伴性があり、被担保債権が譲渡などにより移転すると、それに伴って移転する。 不可分性があり、被担保債権の一部が弁済されても、全額が弁済されるまでは、不動産全体に抵当権の効力が及ぶ。 物上代位性があり、目的物の損害賠償請求権などにも効力が及ぶ。その場合、抵当権者は金銭などの支払いや引渡しの前に差押えが必要になる。

■抵当権の効力範囲
抵当権の効力及ぶ範囲として付加一体物がある。付加一体物とは抵当不動産に付け加えられてその1部となった物をいう。 例えば、建物の増築部分、雨戸、玄関の扉などがそうである。 原則、付加一体物には抵当権の効力が及ぶ。 また、付加一体物と似ているが、従物というものがある。 従物とは、家屋にある畳、物置などのように、独立しているものであるが不動産の利用をよりよくする為に不動産所有者により付属させられたものをいう。 土地と不動産の関係について、それぞれは別々の不動産であり、土地に設定された抵当権の効力は建物には及ばないし、建物に設定された抵当権の効力は土地には及ばない。 果実についても抵当権の効力が及ぶ。果実とは物から生まれる収益のこと。 野菜や果物のように通常の方法で生まれる果実を天然果実といい、地代や家賃のように物の使用対価に対して受ける金銭を法定果実という。 抵当権は、その担保する債権につき不履行があった場合、天然果実・法定果実を問わずその効力が及ぶ。 抵当権により担保される債権の範囲は登記された債権額と満期のきた最後の2年分の利息を限度とし、債権の期限が過ぎて遅延損害金がある場合は利息と併せて2年分を限度とする。 この2年分の制限があるのは、後順位抵当権者や一般債権者の取り分を残しておくため。 このような者がいない場合はこの利息の制限を受けることはなく。全額弁済を受けることができる。 抵当不動産が侵害されたとき、抵当権者は次のような手を打つことができる。 抵当権設定者(債務者)が通常の利用法を逸脱して抵当不動産を損害しようとする場合は、抵当権の被担保債権が弁済期になくても抵当権者はその妨害を排除することができる(妨害排除請求権)。 抵当不動産を不法に占拠する者に対しても、妨害排除請求権を行使することができる。 抵当不動産が侵害され、競売代金が下がり、抵当権者が被担保債権全額の返済が受けられなくなった場合、抵当権者は侵害行為を行ったものに対して、不法行為に基ずく損害賠償請求権を行使することができる。

■抵当権の順位や変更及びその処分
抵当権の順位は1つの不動産に2つ以上の複数の抵当権が設定された場合、各抵当権の順位は設定登記の前後により決まる。 抵当権の順位は関係抵当権者全員の合意と登記が必要である。利害関係がいれば、その者の承諾も必要である。 また、抵当権は抵当権の実行で受け取れるものを抵当権実行前に譲渡することができる。 これにより、抵当権を担保する転抵当や抵当権の譲渡、抵当権の放棄などができる。

■抵当権の実行と第三者
抵当権設定者(債務者)から抵当不動産を譲り受けた者を第三取得者という。 その第三取得者は抵当権の実行によって抵当不動産を失ってしまうかもしれない。 その不安定な状況を保護するいくつかの制度がある。 第三取得者は債務者に代わり抵当権者に弁済をして抵当権を消滅させることができる。これを抵当権消滅請求という。 これは抵当権の実行としての競売の差押えの効力が発生する前に請求しなければならない。 第三取得者は自ら競売に参加して目的不動産を競落することができる。 債務者は競売できない。

■抵当権と法定地上権
抵当不動産の利用権を保護するためにいくつかの制度がある。 <法定地上権> 法定地上権とは、同一人が土地及びその土地上に建物を所有している場合、この土地や建物に抵当権が設定・実行され、土地と建物の所有者が別々になった場合、法律により建物の所有者に与えられる地上権のこと。 その法定地上権の要件は、抵当権の設定当時に、すでに建物が存在意していることが必要である。 また、抵当権の設定当時に、土地と建物の所有者が同一人物であることが必要である。 土地・建物の一方か両方に抵当権が設定されたことが必要。 抵当権の実行によって土地と建物の所有者が別々になったことが必要である。

 
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