法律の理解は難しいが、法律的な思考がわかると意外と間単に理解できます。
それは数学的な考え方に似ているかもしれない。
法律を知る上で、その用語や単語の意味が分かることが前提となってきます。ここでは法律の重要な民法のうち主なものを説明しています。
●民法総則とは
1.私的自治
民法において、個人の意思は私的自治の原則を基本としている。
誰もが合理的な判断ができるものと考え、様々な問題の解決を個人の判断にゆだねている。
この私的自治の原則は、2つの原理としてあらわれ、1つは所有権絶対の原則であり、もう1つは契約自由の原則である。
2.制限行為能力者制度
@制限行為能力者制度とは
未成年者や精神上の障害者などは、売買契約等をする時に、それがどんな結果になるのか、よく判断できない可能性がある。
そのようなときにその者達を保護するために定められているのが、制限行為能力者制度である。
制限行為能力者の種類はに以下の種類がある。
●未成年
●成年被後見人
●被保佐人
●被補助人
A制限行為能力者の種類
■未成年
未成年者とは、20歳未満の者。
保護者として、法定代理人として親権者または未成年後見人が付される。
法定代理人には未成年の行為に対して、代理権・同意権・取消権・追認権を有する。
未成年者が法定代理人の同意を得ずにした行為は、原則取り消すことができる。
■成年被後見人
成年被後見人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所により、後見開始の審判を受けた者をいう。
保護者として法定代理人である成年後見人が付される。
また、成年後見人の事務を監督するために、成年後見監督人が選任されることがある。
成年被後見人には日用品の購入その他の日常生活に関する行為以外の行為についての行為能力が認められておらず、成年後見人の同意を得ずに行った行為はもとより、成年後見人の同意を得て行った行為も取り消すことができる。
成年後見人が単独で行った行為は成年被後見人、成年後見人のどちらでも取り消せる。
■被保佐人
被保佐人とは、精神上の障害により事務を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所により補佐開始の審判を受けた者をいう。
保護者として保佐人が付される。
また、保佐人の事務を監督するために保佐監督人が選任されることがある。
被保佐人は、原則保佐人の同意を要する。保佐人の同意を得ずに、同意を要する行為をしたときは、原則取り消すことができる。
被保佐人が単独で、保佐人の同意を要する行為をした時に、その行為を取り消すことができるのは、被保佐人と保佐人である。
また、保佐人の同意を要する行為について、被保佐人の利益を害する恐れが無いにも関わらず同意をしないときは、家庭裁判所は被保佐人の請求によって、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
■被補助人
被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所により補助開始の審判を受けた者をいう。
保護者として、補助人が付される。
また、補助人の事務を監督するために、補助監督人が選任さることもある。
補助人は補助人の同意をようする特定の法律行為をするときは、補助人の同意を要する。同意を得ずに特定の法律行為をしたときは、その行為を取り消すことができる。
その行為を取り消せるのは、被補助人と補助人である。
また、補助人が被補助人の利益を害する恐れが無いにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
B制限行為能力者の相手に対する権利
制限行為能力者が単独でした行為は、原則取り消すことができる。
制限行為能力者と取引をした相手側は催告権が認められている。
制限行為能力者が行為能力者となった後、相手側は、制限行為能力者に対し、1ヶ月以上の期間内にその行為を追認するかしないのか、催告することができる。この場合、期間内に格闘をしないときはその行為を追認したものとみなされる。
制限行為能力者の間は相手側は法定代理人や保佐人・補助人に対し1ヶ月以上の期間内にその行為を追認するかしないのか、催告することができる。この場合、期間内に格闘をしないときはその行為を追認したものとみなされる。
また、相手側は、被保佐人・被補助人に対して、1ヶ月以上の期間内に、保佐人または補助人に追認できるよう催告することができる。この場合、被保佐人または被補助人が期間内に追認を得たことを発しないときは、その行為を取り消したものとみなされる。
制限行為能力者が行為能力者であるということを信じさせるために詐術を使った場合は、制限行為能力者であることを理由に取り消すことはできない。
取消権は追認できるようになったときから5年、行為のときから20年経つと時効により消滅します。
3.意思表示
@心裡留保
心裡留保とは、冗談を言ったり、嘘をついたりして人をだますことである。
このような意志表示をした者は、自分がした意志表示は、自分が知ってやっているので原則有効となります。
しかし、意志表示の相手が、心裡留保であることを知っている場合やうっかり気づかなかった場合は、有効になります。
また、心裡留保による無効は善意の第三者に対抗することができません。善意の相手側を保護するためである。
A虚偽表示
虚偽表示とは、相手と一緒に共謀して作り上げた意志表示をすること。
虚偽表示をした当事者同士は、この虚偽表示に基づく契約は無効になります。この無効は当事者、また、当事者以外の者も主張することができます。
また、第三者がいる場合、虚偽表示をした当事者から善意の第三者に対して無効を主張することはできません。虚偽表示をした責任に基づき善意の第三者を保護するためです。
B錯誤
錯誤とは、勘違いをして自分の考えていることと違う意志表示をすること。
その効果は、意志表示をしたもの(表意者)に要素の錯誤があり、かつ重過失が無い場合に限り無効である。この要件のうち1つでも無い場合は無効はできない。
しかし、錯誤に陥っていることが相手側が悪意の場合や相手側の詐欺によって錯誤になったときは重過失のある表意者も無効の主張ができる。
また、原則無効主張できるのは、表意者だけである。
ちなみに、要素の錯誤とは、重大な勘違いのこと。
第三者について、錯誤による無効は第三者に対抗することができる。
C詐欺
詐欺とは、相手をだますことである。詐欺によってだまされた相手側は意志表示を取り消すことができる。
すなわち、契約をはじめから無かったことにすることである。
また、この意志表示は、取り消しをしない限り有効である。
詐欺が相手以外の第三者によってされた場合、相手方が詐欺のことを知らない場合は取り消すことができない。よって第三者による詐欺を相手方が知っている場合は、詐欺による意志表示を取り消すことができる。
詐欺による取り消しは、その取り消し前に現れた善意の第三者に対抗できない。
取り消しは登記をしなければ、取消し後に現れた第三者に対抗できない。
D強迫
強迫とは、相手をおどすことです。
強迫に基づく意志表示は常に取り消すことができます。詐欺と同じく取り消さなければ有効です。
また、第三者による強迫があって契約をした者は、常にその契約を取り消すことができます。
また、取消し前に現れた第三者に対し、善意、悪意を問わず対抗できる。
4.代理
@代理とは
代理とは、本人に代わり代理人が相手方と契約をした場合に、その契約の効果が本人と相手方に発生するという制度である。
行為能力はあるが、本人が契約をできない場合、本人が代理人を選任することを任意代理といい、この代理人を任意代理人という。
本人が代理人を選任する場合でなく、法律上定められることを法定代理といい、この場合の代理人を法定代理人という。
また、代理人が代理行為をするとき、その代理行為が本人のためにすることを相手に示す必要がある。これを顕名主義という。
相手に代理行為を知らせるためである。
顕名が無い場合、その代理行為は本人のためにしたのではなく、代理人自身のためにしたことになる。
しかし、代理人が顕名をしなかった場合でも、相手方がその代理行為を知っていた場合やうっかり気づかなかった場合、顕名があったのと同様に本人と相手方の間に契約が成立する。
A代理人の権限
代理人は制限行為能力者でもできるが、その場合本人は、代理人の制限行為能力を理由とした契約の取消しはできない。
あえて制限行為能力者を選任した本人の責任である。
また、代理人は保存行為、利用行為、改良行為を行うことができる。
B復代理
復代理とは、代理人がさらに代理人を選任して、本人のために代理行為を行わせること。
この代理人が代理人を選任することを復任という。そして、この代理人によって選任された代理人を復代理人という。
復代理人は本人の代理人であり、代理人の代理人ではない。
また、代理人は復代理人を選任した場合でも、本人のために代理行為をすることができる。
C自己契約・双方代理
自己契約とは、本人の代理人が自ら相手方となり契約をする場合をいう。
自己契約は原則禁止されており、それに反した場合は無権代理行為となる。
双方代理とは、本人の代理人が相手方の代理人となり、契約をすることをいう。
これも原則禁止される。反した場合は無権代理行為となる。
D代理権の消滅
法定代理人・任意代理人に共通の消滅事由が、本人の死亡・代理人の死亡、後見開始の審判、破産手続開始の決定である。
任意代理人に特有の消滅事由が、委任の終了である。本人の破産手続開始の決定、解除。
E無権代理とは
無権代理とは、代理権を有していない者が、代理人として契約をする場合をいう。この場合の無権代理をした代理人を無権代理人という。
無権代理は、本人に対して何の効果も発生せず、無権代理行為は原則無効であるが、追認によって有効となる。
また、無権代理の場合でも無権代理人が有効に代理権を持っていると思われる場合がある。そのことに本人に責任がある場合には、有効な代理として扱うとしており、これを表見代理という。
本人が望む代理行為については追認できる。それは契約時に遡り有効である。
相手方の保護の観点から、相手がとることのできる手段として、相当の期間を定めて、期間内に追認するかどうかの確答するよう本人に催告することができる。
確答がなければ本人が追認拒絶をしたものとみなされる。
相手方の善意・悪意にかかわらず認められる。
善意の相手方は、本人が追認しない間は、無権代理人とした契約を取り消すことができる。
5.時効
@時効とは
時効とは、一定の事実状態が一定期間継続し、取得時効(権利を取得すること)や消滅時効(権利を失うこと)を認めることである。
一定の事実状態が続くとその状態を基に新たな法律状態が作られる。これを覆すことは、その事実状態に対する信頼を壊し、社会のルールなど乱す恐れがある。
このような理由により、時効制度が定められている。
時効は、期間の経過により効果が発生するが、その効果の確定は時効の利益を受ける者が時効の援用(時効完成を主張すること)をしたときである。
時効の利益を受けるものは、時効を援用することもできるし、しなくてもよい。また、完成後に時効の利益を放棄することもできる。
時効の効力は、時効完成後、起算日に遡る。
取得時効の場合、占有を開始したとき、消滅時効の場合、権利行使が可能となったときである。
A取得時効
取得時効とは、一定の事実状態が継続した場合に、権利の取得を認めること。
<所有権>
原則、自分のものとして所有の意志をもって20年間平穏かつ公然に他人の物を占有した者は、その所有権を取得できる。
占有開始時に、自分の物であることに善意で、そのことに無過失の場合、10年で取得時効できる。
<所有権以外の財産権>
この場合も所有権とほぼ同じ要件で取得が可能である。
占有については、他人が占有する代理占有でもよい。
占有は承継することができ、自分の占有期間だけでなく、前の占有者の占有期間を合わせることができる。
その場合、前占有者の善意や悪意、過失なども引き継ぐ。
B消滅時効
消滅時効とは、一定の期間に権利を行使しないときに、その権利が消滅することである。
消滅時効にかかるのは、債権と所有権以外の財産権である。ちなみに所有権は消滅時効にかからない。
債権の消滅時効は原則10年である。商行為による債権は5年である。
地上権や永小作権などの財産権は20年である。
消滅時効の起算点として、いつ到来するのか決まっている確定期限と到来するのは決まっているが、いつ到来するのか確定していない不確定期限がある。
また、期限を定めていない場合、消滅時効は債権が成立したときから進行する。
履行遅滞となるのは債権者から履行の請求を受けた時である。
C時効の中断
一定時間の継続により時効が完成するが、その継続した事実状態が破られたときは時効は完成しない。
その継続した状態を破り、またはじめから時効の開始をしなければならなくなることを時効の中断という。
また、時効の停止という、時効の中断と似ている制度がある。
これは、天災等で時効の完成を一定期間猶予する制度である。
時効の中断事由は裁判上の請求、差押え、仮差押え、仮処分などがある。